変な奴3

彼は「馬鹿言え、二回も離婚して、自分がもてていると 思っているのか、相手が愛想をつかしただけなのだよ」 とやり返してくる。

 

負けず嫌いの私は「最初の奥さんは、生まれ変わったら、 一緒に成りたいと手紙をくれたよ、それだけ愛されていたのだよ」 と反論すると、「お前ね、自分を判っていないね、 それは彼女の母性本能で、労わりの気持ちで 言っているだけなのだよ、お前は甘いよ」と 私を哀れむように言うのである。

 

私は痛い所を突かれている事が、判っているのであるが、 それを認めると自分が負けてしまうので、認めたくない。

 

「君よりは俺の方がましかもね、持てない男の僻みだ、 負け犬の遠吠えだな」と強がりを言ってしまうのである。

 

そうすると「自分自身を判る奴はいないよ、他人との共存で 世の中成り立っているのだから、自分の物差しで、物事を 決め付けるのは良くないよ」と言ってきた。

 

私は、話が変な方向に行ってしまっているように思い、 「あれ、話の主軸が方向違いに進んでないか?」と言うと 「いいや、お前は自分本位な考えで、言っているから、 注意しただけ」と、いとも簡単に答えるのである。

 

再度、私は「君の好みは判ったが、そんな女性に会って 声を掛けた事があるのか?」の質問に、

彼は「俺は女性に声を掛けるのが苦手だし、

自分は女性の前に出ると萎縮してしまうのだよ」と

先ほどの威勢の良い勢いが、無くなっていたのである。

 

私は、今だと思い「気が小さいな、ノミの心臓か、 それじゃもてないな」と嵩にかかって言ってやるのである。

 

彼は「そうなのだよな、俺が中学の頃から、女子が道路で 屯していると、そこを避けて回り道をした事が幾度も有ったのだよ、 それだけ純だったのだよ、俺は」とホザクのである。

 

私は「馬鹿だね、純じゃ無くて、意識し過ぎているからなのだろう ただのマセている餓鬼じゃないか」と高飛車に言うと 彼は意気消沈してしまうのである。

 

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