変な奴2-2

奴が「最近は調子がどうだ?」と上目使いで言う。

 

私は「普通だな、良い事もないし、これと言って悪い事もない

普通に暮らしているだけで、お金が無いのが悲しいけど」

と奴を軽視して言う。

 

奴は「お金は、お前は最初から無いのではないか、金儲けが出来ない

性格だからな」と言って来た。

 

私は確かに、お金に縁がない。

コンピュータが使われ出した頃からシステムをやっていたが、

当初は忙しくて、残業が月250時間という状態であり、

給料は高かった。

 

だが、その反動で、お金の使い方も派手になった。

家庭を持っていたので休みの時は家庭サービスで豪勢に遊んだ。

性格として貯めるという事が出来ない。

 

奴が「お前は、仕事は出来たが、お金に疎い性格だよな、

誰に似たんのだ」

 

「そうだな、母か父だろうな、どちらも金には縁のない人だったからな

母は良い処のお嬢さんだったし、父も網元に家に

生まれて派手な人だったから」私は、ため息をつきながら答えた。

 

奴は「お前は可哀そうな奴だよな、金に関しては稼げたくせに、

貯められなかった、それで今も貧乏暮らしか」とせせら笑いで言う。

 

それに対して私は何も言えないのである。

 

奴は「あ~あ、貧乏人とは付き合いたくないよな、でも、お前とは

切っても切れない縁だし、俺も付き合う奴を間違ったよ」と

ほざきやがるのである。

 

私は、この時とばかりに「俺も同じだよ、お前が貧乏神なのではないか」

強い口調で言うと、

 

奴は「待て、お前ね、自分の性格を俺のせいにするなよ

今までいくらでも、貯められただろう、それをしなかったのはお前だよ、

あれだけ稼いでいて使ってしまいやがった。

あれば、あるだけ使って計画性が無かったのだよ、お前は」

 

奴の言うとおりなのである、反論できなかった。

奴の行っている事は正しい、私は全盛期の頃は人の3倍近く稼いだ

今から34年前で月100万は稼いでいた。

その頃はコンピュータの絶頂期であり、大手がシステム開発に

躍起になっていたし、人材も少なかったので仕事が出来る奴には

どんどん仕事が回って来た。

 

私も全盛期で色んな会社から「入社しないか」と声が掛かっていたが

一匹狼で自分の好きなようにやっていたのである。

仕事にも自信があったし、油の乗っている時期で生意気盛りであった。

それを知っている彼には弁解できない自分が居た。

 

私は歩きながら“こいつ、また嫌味を言いに来たのか”と思いながら

奴と肩を並べながら歩いていた。

(111)

Leave a Reply

*