私は奴に心を見透かされるのが嫌なので、自分から
話しかけないようにしていたら、
奴が「そう言えば、最近はボランティアに嵌って居るのだって
どう考えても、お前がボランティアされる立場だよな」と
せせら笑いながら私に言うのである。
私はムッとした顔をして、奴を睨むと
奴は「お前ね、自分が分かっていないでボランティアは無いだろ、
お前はボランティアに関して、考え違いをしているのではないか」
続けて奴はこう言った。
「俺ね、ボランティアを辞書で引いたら“自発的にある活動に参加する人。
特に,社会事業活動に無報酬で参加する人。篤志奉仕家。 「 -活動」“と
書いてあったよ」
「確かにお前は自発的の部分は、俺も認めるが、金も無い奴が
ボランティアしていますなんていえるのかな~、俺なら恥ずかしくて
言えないけど」と何時もの嫌味口調で言いやがる。
私は「そうかもしれないが、お金の問題ではないだろうと思うよ
気持ちの問題だと思うのだ、人はそれぞれの経験から、それなりに
優しさや労わりの心を学んで来ただろう、それを生かす事は大切だと
思うのだけど」と私は素直な気持ちで言った。
そうすると奴は「お前ね、それは考え方によっては押しつけであり、
お節介でもある部分もあると思うよ、人はそれぞれ違った考え方を
持っているのだから」
私は負けずに「人間それぞれ違うのでは、性格も違えば育った
環境も違うから思いも、違うのだよ」
奴は「それぞれ違うから、そこが難しい所だと思うよ」
「お前だって最初からボランティアなんてしようと考えたか?」
「自分なりの経験から、その方向に向かって行ったのだろう」
「確かに、お前が30代後半で車いすの人にボランティアで
PCを教えたのが始まりだったな」
「うん、あの時は専門学校で教えていたが、自分の故郷に帰って
車いすの人たちなら、動かないで仕事をする事が出来るから
PCは良いと思ったのと、自分なりにお金も持っていたからね」
「だから母の故郷でもあり、自分の生まれた所でもある函館で
ボランティアで教えようと思ったのだよ」
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