奴は「行ったのか?」と問うてきた。
私は「仕事があるし、俺の立案した計画も通産省と面接も終わっていたので
俺が行かないと進まないから行ったよ」とぶっきらぼうに言った。
奴は「お前、会社に行って、怒鳴った上司とは、どうなったのだ?」
「別に俺は悪と思っていないから、誤りもしないし普通に仕事をしていた、
だけど上司はエレベータの中で二人きりになると嫌味を言っていたが」
奴は「どんな嫌味だ」と、せかして聞いて来た。
「お前、彼女と、どんな関係だとか、よく話をしているよな、
仲が良いのか」と言っていたな。
「俺は友達だし、プロジェクトで一緒に仕事をしていたので」と
はぐらかして答えていた。
「そうしたら上司が、俺も悪かったから、今晩、飲みに行こう」と
誘って来たのだ。
奴は「上司からか?なぜ、お前を誘ったのだ」と問いかけて来た。
私は「通産省の案件は、俺が計画案を作成したから、その案件の為
俺が必要だからだと思うよ」と答えながら、
あの時の案件を思い出していた。
確かに、あの案件は難しい計画であったし、その頃では最先端を行っていた
将来的展望も考えていたので、時間はかかる案件であった。
だから年間1億で、3年間で構築するシステムであった。
案件計画者の私しか詳細部分は、分からなかったのである。
奴は「それで飲みに行ったのか?」
「うん、行った、それも銀座の一流クラブに・・・」
「え~、銀座のクラブにか・・・」
「そうだよ。でも俺、そんなところ行った事が無いので
落ち着かなかったし、早く帰りたかった」
「お前ね、めったに行けない所で綺麗どころが揃っているに、
早く帰りたいは無いだろう」
「俺には似合わないよ、その辺の居酒屋あたりが似あっている」と
謙遜ではなく正直に、その時はそう思っていた。
奴は「それで手打ちと言う事に成ったのか?」
「うん、俺はそう思っていた」
「だが、会社で会う毎に、彼女との事を話すので、
俺は言ったんだ」
奴は「何て言ったんだ」
「私は仕事のことしか考えていませんから、
それに彼女とは友達だし、彼氏が居る事も話したりしますので
彼女とは関係ありません、だから仕事をさせて下さい」と
上司のしつこさに、うんざりしていた。
(141)