変な奴2-8

奴は「そうだよな。お前は仕事人間の融通が利かない男だからな」と

私を見透かした目で言って来た。

 

確かに奴の言う通り、私はどちらかと言えば仕事人間であろう。

それは前にも書いた彼女の死から、自分は逃げていた。

その逃げ道が仕事であったような気がする。

 

奴は「それでお前の計画案が始まったのか」

 

「うん、プロジェクトも作られて、俺の肩書もシステム副部長になり

始まったのだが、プロジェクトの中に上司の腹心の部下が

数人入れられたが、私は、これは想定していたので、

システムさえ開発できればと思っていた」

 

奴は「そうか、始まったのか、でも、やりづらく無かったか

腹心の部下が入っていて」

 

「想定していた事だから、計画案は私の頭の中にあるから、

詳細部分まで来たら、私をお払い箱にしようと思っているのは

分かっていたし、ただ、このシステムだけは完成させたかったから

受け入れた、同時に俺の名前が残れば良いなとは思っていたけどね」

 

奴は「それは無理だろう、大手なんて契約社員なんて切り捨てだよ」

 

「分かっているが、自分の計画したシステムが動けば満足じゃないか

システムは全国規模で使う事を想定していたので」

 

奴は「お前が、そう思うなら良いじゃないか」と、

あきれ顔をして言って来た。

 

私はプロジェクトが立ち上がった時に、上司の腹心の部下が2~3名いた

その時は腹心の部下を入れたのは、詳細設計が出来上がったら

私をプロジェクトから外すなと思っていたし、それまでは私から

計画案と詳細設計書を作らせるだけであろうと思っていた。

それでも、これほどの大きな仕事は、今までやっていなかったので

どうしても完成させたかったのである。

 

奴は「それで始まったのか」と問いかけて来た。

 

「うん、でも、またもやトラブルさ」と私は答えた。

 

「え~、またトラブルか? どんなトラブルだ?」

 

「その頃、俺は月額50万貰っていたんだ」

 

「え~、50万、20年以上前だよな」

 

「そうだよ、それが40万しか寄こさなかったんだ」

 

奴は「何でだよ、10万少ないじゃん」と怪訝そうな顔をして問う。

 

「俺も分からないから聞いたのだ、そうしたら、あきれた返事が

帰って来たのだ」

 

「何て返って来たのだ、それも10万は大きいな」

 

「うん、あの10万はペナルティ分だって言うのだ、

何のペナルティですかと、俺は聞いた、ペナルティを

受けるような事はしていなかったので」

 

奴は怪訝そうな顔をして「何のだよ」と聞き返して来た。

 

私は、またもや嫌な事を思いをしながら

「彼女の問題で、私が憤慨した事でと、ぬかしやがるんだ」

“俺は悪くないし、間違った事をしていないのにペナルティは

無いでしょう、それに、銀座で飲んで、その件は終わったのに、

これは問題ですと言って“俺は会社を出て来たんだ。」

 

「え~、また会社に行かなくなったのか」とあきれ顔で奴は言い

「その上司、彼女が好きだったのでないか?良く飲みに連れて

行って言ってたよな」

 

「そうかもしれないが、俺は悪くないと、思っていたから

会社に行かなかった」

 

「それで、システムの方はどうなった」

 

「俺が行かないし、まだ始まったばかりで概要も

出来あがって無い状態であったから、動いてないも同じ」

 

「それで、お前は会社に行かなかったのか」

 

「行く気がしないよ、あんなくだらない事を引きずる奴と

仕事がしたくなかった」

 

「じゃ、システムは終わりか」と奴は言いながら

「お前の意気込みも、そんなものなのだな」と

あきれ顔で言って来た。

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