変な奴2-18

「そうだな、それは俺の仕事好きが目を覚ましてくれたのかも、

日本のDOAの計画案の公募があって、ドミニカ共和国では

20近くの部門で日本が援助していた。

専門家、青年が殆どで、私たちのシニアは

俺が第1号で他の部門で3名ほど来ていた。

大使館からDOA案件の作成依頼が来たので、私の考えている事を

案件として出した。

どうせ、専門家の案件が優先されると思っていたし、俺たちは

専門家の半分の給与であり、業務に使える資金等は10分の1程度

だから、期待などして居なかった。

それは赴任して1年目だった、その頃は騙されて、こんな国から

早く帰りたいと思っていたな」と、シミジミとして答えた。

 

「確かに、あの頃は、お前は今すぐにでも帰りたい気持ちを持っていたな。

だけど良く我慢したな、それもドミニカの友達と家族が居た部分が大きいし、

同時に専門家の一人と友達に成った事も良かった。

彼が居たからもった部分もあるな」

 

「うん、彼は多く中南米の国を回っていたので、習慣など知りつくして居た。

だから、その国の状態や習慣などを教えてくれたし、ストレスの解消方法も

彼から学んだな。

彼の存在が、一番大きかったかもしれないな、残る気持ちに成ったのは」

 

「そうだな、お前と、その専門家の友達は毎週末に成ると

遊んで歩いていたな、カジノやディスコに繰り出していたな。

それと最初に彼(専門家)に会った時の事を思い出すと俺笑ってしまう。

お前は、彼が住んでいる所を紹介された時に“サンフランシスコ”と言われて

お前、この人、アメリカから来てるのかと、思っていただろう。

俺、お前の顔を見て噴き出したよ」

 

「うん、カリブ海を挟んでアメリカ大陸だからな、“サンフランシスコ”と

聞いた時は、アメリカのサンフランシスコを思い出した、

ドミニカにサンフランシスコと言う地名があると思わなかったからな。

誰でも来たばかりで“サンフランシスコ”と言われたらアメリカの

サンフランシスコを思い出すと思うよ。

でも、本当の地名は“サンフランシスコ・デ・マコリス”と言うのだと

聞いて納得したけど、最初は何故にアメリカから来るのかと思っていた」

 

「馬鹿だね、お前は、どう考えてもアメリカから来るわけがないだろう

あれだけ頻繁に来るのだもの、ドミニカ国内だろうが、

ドミニカ共和国はアメリカに占領された時期もあったからな、

だから道路の名前もアメリカの人名が使われて居るじゃないか、

お前の住んでいたマンション前の道路も、アブラハム・リンカーンて

言ってたし、別な道路にはジョン・F・ケネディという名前もあるしな、

ま~、来たばかりだと分からないかもしれないな」と

馬鹿にした言い方をしたのである。

 

「確かにアメリカの影響なのか、アメリカの系統の名前は多いよな。

それは当たり前かもしれない、コロンブスが最初に発見した島だからな

それでラテン語系の地名がアメリカにあるのだと思ったよ。

ドミニカ共和国がある島は、エスパニォル島と言うのだもな。」

 

「お前ね、ぜんぜん勉強もしないで来たのだな、普通の人は

自分が海外で生活する場合は、色々情報を集めて来るよ。

お前は舐めてるよ、外国生活をだから騙されもするのだ。

あきれた楽天家なのか、ただの馬鹿なのか分からない奴だな、お前は」

またも始まった私をコケにする口調で。

 

確かに私は日本で応募する時に、コンピュータ関係で幾つかの要請国があり

単純にカリブ海は綺麗だと思って、ドミニカ共和国を選んだ。

言葉の事もスペイン語などと分かっていなかったし、

日本の嫌な思い出から逃げ出したいのと、日本独特のシガラミを

嫌っていたから、海外に出たかった部分もあった。

ただ、私は若い頃から海外に出たいと思う気持ちが強かったので

それが実行される機会が出来たと思っていた。

「確かに、お前の言う通り俺は楽天家だよ、あまり深くは考えないで

実行に移すタイプだろうな、だから知らない外国にも行けたのだと思う、

日本で知人の多くに“言葉も分からないのに良く行くね”と言われた

でも俺は行けば何とかなるさと思って来たから、深くは感がえていないし

決まったら逃げられないから、その国の事もザッと調べてだけだよ」

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