変な奴2-19

奴は「それで、良くシステム設計が出来たな、こんな大雑把な奴になら

俺だったらシステムは頼まないぞ」と言うのである。

 

「確かに大雑把かもしれないが、仕事に対しては、別な部分が出て来るのだよ

性格的には大雑把だから、あのハードな時代に身体も持った部分もあると思うよ。

そうでなければ神経が参ってしまうよ、月250時間以上の残業を

こなして、徹夜、徹夜の毎日を繰り返して居たら、

自分で自分をコントロールしなければ、どうにもならなくなるよ。

ましてや、その頃はコンピュータの成長期だから

人手も足りない状態だから、そんな事が1年や2年でないのだから」と

反論した。

本当に、その頃はハードであった。

建築関係の人なら、雨が降ると休めるが、私たちは室内で仕事をしているので

休む事も出来ないし、特に納期近くに成ると徹夜は当たり前であった。

奴は、それを知って居ながら言うから、私は腹が立つのである。

 

奴は「お前は、ドミニカでは騙されたかも知れないが、

4年間、仕事をしたのだから性格的に合って居たのかもしれないな

そうでなければ、4年間は居ないだろう」と

機嫌を取るように言うのである。

 

「そうだな、俺の性格がいい加減な所が、ラテンに向いていたのかも

こちらの連中は日本人からすれば、いい加減すぎる。

時間はルーズだし、仕事より私生活の方が優先させるし、

俺は最初の頃は、こいつらの頭の中は女の事しか考えていないのかと

思ったくらい、女性に対しては豆だった。

それを仕事に向ければ良いのにと思ったが、こちらでは日本的に考えたら

とても生活出来ないと思った。

それに気が付いたのは1年近く経ってからだったな、

それでODAの案件通ったので、特例で4年に成ったのだ。

今でもシニアでは、4年と言うのは最初で最後みたいだよ、

同時にODA関連も同じ見たい」

 

「でも、良く通ったな、お前の計画案、そこが不思議だよな

こんないい加減な奴が計画したものを認めるとは?

日本でもお前が計画した案件が、通産省でOKに成ったのだろう、

こちらでも計画案が通ったと言う事は、お前は企画力があるのだな

人は分からないものだな、俺からすると、いい加減な奴にしか見えないけど

企画が通るとは世の中、狂ったかな?」と馬鹿にした言い方をして来た。

 

「確かにな~、いい加減な所もあるよ、でも俺は何時も考えている

仕事に入ったら最善の方法を見つけたいと思って観察するのだ。

仕事場の人たちの行動や業務内容を見ている、何処かに改善点がないか

これを変えたらどうなるとかを考えているな。

どうも私の癖なのかもしれないが、道を歩いていても

何か使えるものがないかとか、これを、うまく使うと別な部分が

生きるのではないか等、何時も何かを求める性格みたいと

自分で感じる」と答えながら、私は電車に乗って外を見ていても

何か使える事がないかとかを考える癖が、日本に居た頃からあった。

それが自分では自然なのであるから、他人から見ると変人であろう。

 

奴は「それでドミニカか・・、帰国してから大腸癌にもなったし

良く生きていたよな、憎まれっ子、世の憚るとは、よく言ったものだ

お前は癌だと分かって居ながら、病院にも行かなかったよな。

あの時は、お前の親父も癌で死んでいるから、

あきらめて病院にも行かないで、死を覚悟していたのだろう。

どうにもならなくなって、倒れてから病院に行ったよな。

あの時は、お前は死を覚悟して、癌と分かって居ながら病院にも

行かなかったのだと感じていた。」

 

「確かに、あの時は癌と自分で分かっていたし、職場の人たちからも

痩せすぎで何処か悪いのではないかと言われていた。

自分なりに癌の兆候があったのも分かって居たのだ。

でも人間、死ぬ時は1度だけだと思って、3か月近く病院にも行かなかった。

病院に行っても癌と宣告されるのが嫌だったのかもしれないし

怖かったのかもな。」

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