「ところが、また、会社から迎えに来たのだ」
「え~、またか」
「そう、システムが開発できないからだろうが、同時に
通産省が絡んでいるので、大手ゼネコンの立場が無くなるからな」
私は「お前、知っているか、大手ゼネコンのやり方」
奴は、好奇心の目で「何だ、大手ゼネコンのやり方って?」と
問いかけて来た。
「それはね、各大手ゼネコンは省庁に無給の人を張りつかせているのだ。
それで各省が出す公共事業を貰い受ける、各大手ゼネコンが談合の前に
省庁から出る公共事業を振り分けているのさ、同時に各省庁は
その連中に詳細部分を作らせて、自分たちが作成したように思わせている。
これが省庁のやり方、大手ゼネコンは、それを当たり前にやっているし
各省庁も、当たり前だと思っている。
言うなれば癒着だよ、この現実は国民には分かっていない。
官庁が関わる公共事業は、事前に大手が計画案を作成して省庁が公表する。
受注は大手ゼネコンが直接受けて、実行するのは、ひ孫請け等である。
談合の前に各大手ゼネコンの話し合いが行われているのが実情なのさ」
と私は自分が見た事を奴に言った。
奴は「え~、それ本当か、各省庁に大手の社員が入っているのか、
それも無給で?」
「俺が仕事を、やっていた頃はそうだった、今も変わらないだろうな」
と私は答えた。
奴は「本当か、でも国民は分かっていないよな、そんな事」
「当たり前だろう、分かったら大変な事に成る」
奴は「所で、話は前の戻すが、お前はどうなったのだ」
「うん、システムを完成させたいから、会社に行った、
そこで私の上司は昇進に成り、私の直接の上司は変わったのだ、
私はこれで仕事もうまく行くと思った」
奴は「思ったって?」
「俺と直接の上司は、うまくやっていたし、気があった。
所が逆に、それが前の上司は、面白くないのだろう。
会う毎に俺を睨んでいたな、でも俺は、仕事さえ出来れば
良かったので知らん振りをしていたが、
前の上司に会議室に呼び出されたのだ。」
「何で前の上司に呼び出されたのだ?」と奴は怪訝な顔をして
問うてきた。
「俺にも分からなかった」
「なんか言われたのか」
「うん、会議室で前の上司は“俺はお前が嫌いだ、お前と会うのも
嫌だと“と言って来た」
「それは、何故に、そんな事言うのだよ、
お前とは直接の上司で、なくなったんだろう」
「そうだよ、私が今の上司と、楽しそうにやっているのが
面白くないのだろう、本当に気があっていたからな」
奴は、「それで、お前は前の上司になんて言ったんだ」
「うん、私もあなたが嫌いです、そんなに嫌いなら
私は出て行きますと答えた」
奴は、「またか、お前も懲りない奴だな、今の上司とは
うまくやっているんだから、そんな相手、うまくいなして置けば良いのに」
と“お前はどうしようもない、融通利かずだな~”という顔をして
言って来た。
私は「確かに、いなして置けばいいのだが、毎日顔を合わせるのは
間違いないし、そこまで言うなら、こちらも意地があるからな、
それで今の上司に、会議室の事と前の事件の事を説明して
会社を出て来たのだ」
「またかよ」奴は、お前は馬鹿かという顔をして、
あきれた口調で言って来た。
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